-- 心弾む感覚を取り戻したい --

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ストレスが仕事

太陽のもとで本を読む

仕事を退職したら太陽のもとでゆっくりと本を読んでみたかった。

仕事を退職したら「太陽のもとでゆっくりと本を読んでみたい。」 とずっと思っていた。 思い返せば、ずっと時間に追われ続けていたと思う。


「早くしなければ。」「どうにかしなければ。」 私は、ずっと焦って過ごしていたし、それを妻や子供たちを始めとした周りの人々にも強要してしまっていた。 何でも早くしたかったし、早くやることが自分のすべてのような錯覚。 本当は、時間があるのに全く時間がないと常に感じ、時間に追われ続けた。


時間を作るために時間を失う。 時短。時短。と一手間を短縮するために考え、生み出した時間をまた時間を作るために費やした。 どんどんとエスカレートし次第にゆっくりと過ごす感覚さえ失ってしまっていたと思う。 ゆっくりと話をする。ゆっくりとテレビを見る。ゆっくりとご飯を食べる。ゆっくりと寝る。そんな簡単なことが私には、とても難しかった。


ゆっくりしているつもりでも心は焦り、いつも仕事のことが頭から離れない。離すことができずに自分を家族を苦しめていた。 だから、退職すると決めた時に真っ先にやりたいことの一つとして実行すると決めていた。


そして、出来ないと思われていた退職が実現し、ようやく太陽のもとでゆっくりと本を読むことができた。 何とも言えない有意義な時間。 時折、これから先のことが頭をよぎったけれど、今は考えずにゆっくりと過ごすことだけを考え、嫌な思考を押さえこんだ。


太陽の光を浴びながら風を感じ、木々や小鳥のさえずりに耳を傾け、身体全身で今ある時間を大切に感じたかった。 人と遭うのがとても嫌だったから本を読むのは誰もいない静かなところで、今まで来たことがない場所をセレクト。 開放感をより一層引き立ててくれるし、高揚感も生まれる。 ここら辺は、とても田舎なので周りは山ばかりだけれど、本を読むに最適な一等地は、 おじいちゃんやおばあちゃんであふれている。 だから、場所を見つけるのも一苦労だったけれど、それもまた楽しむようにした。


家の中や車の中で本を読むより、椅子に腰かけ太陽のもとで本を読む方が何倍もすがすがしい。 生きている感覚がよみがえるし、今をしっかりと感じることができる。 今、私はただ本を読んでいる。 ただそれだけのことなのに今まで感じたことがないような時間を得ることができた。


時折、お仕事休憩の方がいらっしゃることもあったけれど、気にせずにゆっくりできた。 今までは、人が来たら逃げるように退散していたし、気にし過ぎて全然ゆっくりできなかったけれど、大きな心の荷物がやっと下りたことで前よりも落ち着いて行動できた。 「なんだ。私にもできるんじゃないか(笑)」 と気持ちの変化も頭でちゃんと理解することができたし、少しは心の余裕が持てた。


太陽のもとで本を読むだけなら退職する前でも出来たんじゃないかと思う。 やろうと思えばいつだってできた。 でも、しなかったしやろうとも思えなかった。 とにかく辛かった。だから、自分の中で大きな決断ができてよかったと思っている。 この気持ちを忘れずにこれから先のことをゆっくりと考えていきたい。


先のことを考えると不安でしょうがなくなってしまうけれど、急ぎ過ぎてしまった自分を一度リセットする必要があると思うし、今は考えたくない。 とてもわがままなのかもしれないけれど、本当の自分はこんなじゃない。 もっと人生を楽しめるはずだ。


あるかどうかも分からない不安にかられ続けるのではなく、自然が生み出す時間をしっかりと感じながら元気に過ごしていきたい。 太陽のもとでゆっくりと過ごした時間は、かけがえのないもの。 読んだ本の内容はよく覚えていないけれど、ただゆっくりと文を読むことができた。


落ち着いて本を読むことができた。 今までの自分じゃないみたいに感じることができた。 ほんの些細なことだけど自分を少しだけ変化させることができた。 今の私は、怒ったりイライラしたりしていない。 こんな落ち着いた自分が好きだ。 そうだね。私は本当はもっとマイペースな人間だった。 今あることに集中できたし、それが楽しいと感じることもできた。 働き始めてからほとんど感じることが出来なくなってしまった感性も蘇らせていきたい。


まだまだ人生これからだ。 大丈夫。大丈夫。



あじはた